社会

ポストトゥルースとは|ポスト真実の本質とメディアのジレンマ

更新日:

米国大統領選挙でのトランプ大統領誕生やイギリスのEU離脱でにわかに注目を浴びたワード、ポストトゥルース(Post Truth)

ポスト(Post)はポストモダン(近代以降)に用いられるように、~の後、以降の意。

トゥルース(truth)という単語は真実を意味します。

合わせて直訳すると、脱真実、あるいは真実の後になり、通常「ポスト真実」のように訳されます。

オックスフォード辞書によるとこの単語は、「客観的な事実よりも感情的な訴えかけの方が世論形成に大きく影響する状況を示す形容詞」とあり、オックスフォード大学出版局のWord of the Year 2016に選ばれています。

スポンサーリンク

スポンサーリンク

全国規模の井戸端会議

なぜ事実軽視・感情優先の情報が飛び交うようになったかについて、各所で解答として挙げられるのがSNSの普及。

今まで一部のコミュニティ内だけで終わるレベルの根も葉もない話が、SNSで拡散されるようになったからです。人間の性質や知能自体が変化した訳ではないのでしょう。

そもそもこの世には解釈しかない

事実はない。あるのは解釈だけだ。 - ニーチェ

事実と共に人々の意見が分断されるとき、双方は相手側が間違った真実を真実と信じていると思い込みます。果たしてそうでしょうか。

そこに事実はありません。あるのは、解釈だけです。

すべての事実、真実は人間の五感を通して知覚される過程で解釈、意見に変容するのであって、ましてや人の口や手から伝達できる代物ではないのです。

極端にいえば、どれだけ公平を装っていようと、人間はポジショントークから逃れられない動物です。

TwitterやFacebook上で繰り広げられる議論は互いの主張のぶつかり合いに過ぎず、やはりそこに事実はありません。

ジャーナリストの幻想

「私たちの使命は真実を伝えることだ」と意気込むジャーナリストの方には申し訳ないですが、真実を伝えるなどというのは土台無理な話。

彼らが真実と呼ぶそれは、時に正義やデマと称されることはあれど、報道というフィルターを通じた時点ですべての情報は事実でなくなります。別の言い方をすれば、事実が無数に飛び散ってしまう。

もし仮に、ある都市で立てこもり事件発生し、テレビで生中継されるとします。

その映像を何分間流すのか。どこからどこの場面を切り取って放送するのか。どんなナレーションを、どんなナレーターが、どんな言葉で読みあげるのか。犯人の紹介の仕方は?司会の口調は?テレビのテロップの出し方は?

どんな些細な物事でも、何かを情報の発信側が選択している以上、そこには無意識の内に組織や個人の意思が介在することを避けられません。どんなに予算があっても人手があっても、です。

新聞記者を締め出した総理大臣

1972年6月17日、かつて内閣総理大臣だった佐藤栄作は退陣表明会見から新聞記者を追い出し、テレビカメラに向かって語り続けました。

彼は記者に真実を暴かれるのを避けたのでしょうか。

いえ、自分の意にそぐわない意見を書きたてられるのが単に嫌だったのでしょう。

何人であっても、人を通せば何かしらの意図が介在し、自らの思いをそのまま国民に伝えられない。政治家として日々それを痛感していたのだと思います。

一方で追い出された記者達の態度も感情的で、「テレビと新聞を分ける考えは絶対許せない」「じゃあ出ましょうか!出よう出よう!」と興奮や怒りが隠しきれない。首相側と記者クラブ間で事務的な手違いもあったようですが、案の定、新聞各紙の報道は批判的でした。

これはあの会見での真実でしょうか?

私が投げかけたいのは、退陣する首相を労えとか思想的なバランスを取れということではありません。

メディアの役割とは何なのかという一つの疑問です。

メディアのジレンマ

報道機関を含むすべてのメディアは、漁師になるか、料理人になるかで役割が異なります。

材料をできるだけ新鮮なまま客に届けることに徹するのか、素材を最大限に生かした自分たちの料理を客に振る舞うのか。

つまり、事実をできるだけ濁さずに受け手の大衆に届けるのか、それとも事実を加工して分かりやすく見聞きしやすいニュースに変えるか。

テレビ、新聞、ラジオ、ネット、どこを見回しても後者が圧倒的です。

それも仕方のないことで、必然とも言えます。

メディアとて営利目的の私企業。人の注目を集めてナンボの業界です。つまらないメディアからは大衆は離れていきます。購読料も広告収入も得られない。それでは社員の生活は立ちいかない。

入手した情報や音声、映像を無味乾燥にまとめたものを提供しても、興味を示す人は少ないでしょう。

理由は簡単、つまらないから。

それなら面白おかしい方を選ぶのが大衆心理として当然です。感情で味付けしなければ、料理を食べてすらもらえない。

しかしこの理屈で考えれば、昨今のNHKのコンテンツが民放に寄ってきていることに違和感を覚える方も多いはず。ニュース番組でも女子アナはきらびやかになり、バラエティ番組も増えました。

私企業のメディアは情報を加工する料理人でも理屈は通ります。

しかし公的な報道機関は、漁師に専念せねばならないのが筋ではないでしょうか。

結局は人間の欲望がデマを生む

一人一人のメディアリテラシーが発達し、嘘を見抜く力が向上すれば、少なくとも明確に誤った解釈に踊らされることはなくなります。

もっと理性的に情報の取捨選択を行い、自ら受発信する度に信頼性の高い客観的な資料に当たるようにする。でも、それができないからポストトゥルース論が生まれたのです。

ヒトは皆、楽をしたい。刺激が欲しい。そして感情的な反応を避けられない。

こうした人間の本能的な性質が、今のジャーナリズムを生んでいる理由の一端ともいえます。

「私たちは国民を代表して~」などとしたり顔で抜かす記者を見る度に苦々しい思いでしたが、ある意味ではそれも間違っていないのでしょうね。

どのような解釈をするかは知識と経験に左右される

投資詐欺に騙されない人は、騙される人と何が違うのでしょう。

変な話を持ち掛けられた際に、精神的に冷静な判断に努めることも勿論大事ではありますが、金融知識も含めた、知識量の差にあるのではないでしょうか。

ポストトゥルースの世の中に飲み込まれないためには、明らかに間違った意見を見抜く知識が必要。勘やセンスは単なる才能で片が付くものでなく、知識や経験の蓄積から導かれる直感という声が多くなっています。

将棋棋士の羽生善治氏は著書『決断力』の中で、

これまで公式戦で千局以上の将棋を指してきて、一局の中で、直感によってパッと一目見て「これが一番いいだろう」と閃いた手のほぼ七割は、正しい選択をしている。

と明かしています。

幾度となく採用面接を繰り返してきた経営者が何となく優秀な人材を見抜けるように、知識と経験の蓄積で判断力を養えるのではないかと思います。

そもそもデマが発信される過程には、最初から悪意のものを除けば、①情報の発信者の説明不足、②受け手の誤読、③誤解した受け手による拡散のプロセスを辿るケースがほとんど。

ということは、このどこかで流れをせき止められればフェイクニュースは減るはず。

そのために最も効果的な方法こそ勉強であり、勉学の目的の一つには判断力を高めることにあります。

しかし、事態はそう簡単ではありません。

参考 中3の15%、短文も理解困難 教科書や新聞で読解力調査(東京新聞)

参考 「知識を手に入れるための知識」がない人にとって、Google検索はあまりにも難しい。(Books&Apps)

「選挙の神様」とまで称されたことのある田中角栄は、「大学出も、70、80のばあさんも同じ一票」という言葉を残していますが、いまや政治学者もビジネスマンも主婦も選挙権のない子供も、誰でもSNSのアカウントを作れて、情報の受発信が可能。

加えて参考記事のような状況が進めば、放っておくとこれからも誤情報の拡散は増加し続けます。

メディアからもまた、読者や視聴者のミスリードを誘うコンテンツが増えてくるでしょう。

情報の受け手の負担は大きくなるばかり。

一度目の誘惑を耐えても二度目で浮気してしまう男性のように、理性は物量による扇情を防ぎきれるほど完璧ではない。最近ではどんなにリテラシーの高い人も、感情に訴えるツイートをリツイートで拡散するような形で思わず騙されてしまい、後に謝罪するケースも見受けられます。

果たして、ネット上に巡り巡る感情的な解釈に惑わされずに済む方法はあるのでしょうか。

スポンサーリンク

スポンサーリンク

記事を最後まで読んで頂いてありがとうございました。

もしよろしければSNSでシェアしてくださると嬉しいです。

おすすめ記事

1

この記事ではおすすめのオンライン英会話を比較して紹介しています。 私自身、オンライン英会話を活用してTOEICや英検のスピーキングに対応した経験から、受講者のレベルや用途に合わせて各サービスを評価して ...

2

昔は証券会社の窓口に行って口座を開設して、担当者とやり取りして・・・と面倒だった投資も、ネットで簡単にできるようになりました。 資金が少なくても大丈夫。口座さえ開ければ、好きな時に好きなスタイルで株取 ...

bitcoin 3

2018年1月11日から「DMM Bitcoin」の仮想通貨取引がスタート。それに伴い、口座開設ができるようになりました。 このページでは、初めての方でもわかりやすいように、DMMビットコインでも口座 ...

-社会

Copyright© ミセラノーツ - MISCELLANOTES , 2018 All Rights Reserved.