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やはり天才?夏目漱石の講演『私の個人主義』からわかる個性と仕事探しの極意

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夏目漱石といえば誰もが知る文豪というイメージですが、実は講演の名手でもありました。

五つの講演集を収録した『私の個人主義 (講談社学術文庫)』を読めばその凄さはすぐにわかります。なんたって話が上手い。近況報告や講演依頼を受けた経緯を巧みに話すうちに、するする~っと本題に入っていきます。分量も短く引き込まれるので、読みやすいです。

今回は学習院で漱石が学生に語った「私の個人主義」という講演をもとに、仕事探しをテーマに思いついたことや気づいたことをまとめてみます。

ちなみに講談社学術文庫版には、「私の個人主義」のほか、「現代日本の開化」「道楽と職業」「中身と形式」「文芸と道徳」が収録されています。仕事探しに悩んでいたり、生き方を模索する人にも大きな気づきが得られる講演集ですので、手に取って損はないと思います。

漱石が文学に至るまでの経緯

知ってる人は知っているでしょうけれど、夏目漱石って英語教師だったんですよ。東大では英文学を専攻していました。
そんなエリートなので、当時の文部省から誘いがあってイギリスに留学します。

なぜ英文学を専攻したのかについては、本稿では「何が何だかまあ夢中だった」とあります。(P131)

天才っぽいコメントですね。でも案外、何かにハマるときは深く考えないのもわかる気がします。

しかし東大を出て成り行きで教師をしていた漱石でしたが、ずっと教えることに対して違和感を抱えていたそうです。

しかも一方では自分の職業としている教師というものに少しの興味も有ち得ないのです。教育者であるという素因の私に欠乏している事は始めから知っていましたが、ただ教場で英語を教える事が既に面倒なのだから仕方ありません。P132

「自分教師に向いてないなー」と思いながら、毎日教壇に立っていたんですね。

今でいえば、自分の適性と仕事のミスマッチを感じていたということです。他に何か打ち込めることはないかと見回してはみるものの見当はつかず、陰鬱な日々を送っていたとあります。

自分に合った仕事を見つけて転職しようしようと思いながら、それがどんな仕事か全然わからずに薄暗い気持ちで日々過ごすのと似ていますね。

そんな不安を抱えたままで留学しても学業に身が入るはずもなく、本を読んでもつまらない、何のために読むのかわからない状態になって、初めて漱石は「文学とは何か」を自力で根本的に作り上げるしか自分を救う道がないのだと悟ります。

自分のやっていること、自分のやろうとしていることに、概念ベースで根本から向き合うことを選んだのです。ここら辺が頭の良い人って感じです。普通なら、「この仕事は俺は合ってないから他にいい仕事ないかなー」ってなりますよね。

というのも、この時漱石は、他人が良いというものを無意識に自分も良いと思っていたことに気づいたからです。

当時から欧米人の言うことに追従するのが日本人の悪い癖だったようで、人々が西洋人が言ったことを鵜呑みにして吹聴する様子が書かれています。

ずっと心を覆っていた不安の原因は、人真似の知識ばかりで判断して自分で本当に腹から納得した答えを持っていなかったからだったのです。

そこから自己本位という哲学を発見した漱石の心からは、不安は消えていきます。

自己本位とキャリア

私は自己本位という言葉を自分の手に握ってから大変強くなりました。彼ら何者ぞやと気概が出ました。今まで茫然と自失していた私に、ここに立って、この道からこう行かなければならないと指図をしてくれたものは実にこの自己本位の四字なのであります。P136

私は私の意見を曲げなくてもよい、人の尻馬に乗って騒がなくていい、西洋人ぶる必要はない理由を著書などで示すことを自分の仕事にしようと考えます。英語をバリバリやっていた漱石がなぜ日本文学に転向したのか、ちょっと見えてきますね。

結局多忙や神経衰弱に見舞われたこともあって、文学論は失敗に終わったようですが、自己本位という考えだけは消えるどころか年を経るごとに強くなっていったそうです。

自分の仕事をどう見つけるかについて、漱石はこう言っています。

もし貴方がたのうちで既に自力で切り開いた道を持っている方は例外であり、また他の後に従って、それで満足して、在来の古い道を進んで行く人も悪いとは決して申しませんが、(自己に安心と自信がしっかり附随しているならば、)しかしもしそうでないとしたならば、どうしても、一つ自分の鶴嘴で掘り当てる所まで進んで行かなくっては行けないでしょう。P138

乱暴に言うと、

いきなり天職に巡り合える人なんてそうはいない。だからとりあえず何かやってみろ。何かやるっつっても何やればいいか始めはわからないだろうから、何かにぶち当たるまでとことんやれ。自分で自分の道を切り開いて何か見つければ自信になる。そうして見つけた仕事への自信は簡単には失わない。

という感じでしょうか。

漱石が文学論を自力で根底からとことん考え抜いたように、その仕事を徹底的にやることが、自分の道へつながっていく。

人からこう言われた、あの人はこうやって成功したではなく、自分が自分の仕事に向き合う。何となく仕事をやる苦しさを抜け出せば、幸福と安心が得られる。

当然ながら、キャリアプランニングや適職診断などという言葉の存在しない時代です。だからこそ、いつの時代も普遍的に通ずるものがあるのではないかと思います。

個人主義の作法

ここからがさらに重要なんですが、なぜ仕事で何かを掘り当てるまで進むべきかというと、そうやって見つかったものが幸福と安心をもたらしてくれるからです。それってまさに、個性と仕事が合致するから、自分に合った仕事だからなんですよね。

で、ここで漱石は聴者である学習院の学生に釘を刺します。

そこで前申した通り自分が好いと思った事、好きな事、自分と性の合う事、幸にそこに打つかって自分の個性を発展させて行くうちには、自他の区別を忘れて、どうかあいつもおれの仲間に引き摺り込んで遣ろうという気になる。その時権力があると前いった兄弟のような変な関係が出来上るし、また金力があると、それを振り蒔いて、他を自分のようなものに仕立上げようとする。p143

つまりあなた方はお金持ちで、将来権力者になる人も多いだろう。人に自分の考えを押し付けられる力を得ることになる。でも、自分の個性を尊重したいのならば、人にそれを押し付けてはダメだ。自分の成功例や経験則をもとに人に同じことをさせてみたくなるだろうが、他人には他人の個性がある。それを認めろ、と言っているのです。

これは時代や分野に関わらない忠告です。自分はこうだった、でも成功した。だからあなた(お前)もこうしろ。学校、会社、家でもよく耳にするフレーズではないでしょうか。

自分の個性を大事にするあまり、他人の個性をないがしろにするようでは全くスジが通りませんよね。

個人主義はさびしい

しかし、他人の個性を認めるのは、他人の思想への干渉を控えることにもなります。

漱石が朝日新聞に勤めていた頃、ある批評記事を載せたところ、一部の読者からクレームが届きました。事実誤認があれば問題だが、批評は批評だから取り消せないと拒否していると、批評の対象だった本人からではなく、その取り巻きがどうしても記事を取り消せと問合せてきたのです。さらに取り巻き達は自分たちの発刊する雑誌で毎号漱石の悪口を書きたてる始末。

本当に自分の個性に立脚した価値観をもって、個人を大事にするなら、他人に集団で意見の変更を求めることなどしないはず。

漱石は彼らを時代遅れと思い、封建時代の人間の団体のようにも考えたとまで言っています。残念ながら、現在でも似たようなことは絶えません。

個人主義においては人がどうこうではなく、自分が道理に思うかどうかを判断して行動する以上、時に孤独で淋しい思いを抱えていかなくてはならないのです。

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