サッカー日本代表で実力のある有名選手やベテランが招集されないと、一部メディアは決まって監督の決断に疑問を呈します。
あるいは、読者やファンの不安を煽るような記事を上げたりしますね。
最近だと、本田、香川、岡崎の通称ビッグ3が代表選考から漏れると、監督のハリルホジッチに対して批判的な論調の記事を見かけます。
メンバーに限りがある以上、なかなかすっきりしない問題ではありますが、結局のところ原因は、それぞれの関係者の思惑の違いにあります。
スポンサーリンク
目次
代表監督の思惑:W杯での勝利
参考「美しいサプライズ」ビッグ3外しのハリル監督真意(日刊スポーツ)
こちらの記事に、かつて「ハリルの右腕」と呼ばれたノルディン・クリシ氏のインタビューが掲載されています。
2014年ブラジル杯でハリルがアルジェリアをベスト16に導いたときのコーチですね。いわば、ハリル・ホジッチの盟友といえます。
彼が言うには、
「バヒドの口癖を思い出す。『常連のことは分かっている。(新戦力には)知らないからプレーさせるんだ。それが美しいサプライズになり得るから』と。才能と質に歴史は関係ない。大事なのはピッチ上。『いいプレーができれば残り、逆ならば去るだけだ』とね」。
つまり、ハリルは同じメンバーでずっと国際試合を戦うより、色んな選手を試した方が得られるものは多いと考えていると言うこと。
できるだけ多くの選手、多くのパターンを過去に実績にかかわらず試したい。それがすべてだと思います。
スポンサーの思惑:人気選手を使ってほしい
W杯での勝利を見据えてあらゆるメンバーを試そうとしているハリルですが、スポンサーはそれが面白くない。
なぜなら、企業がCMに起用した選手が出場しなければ、広告の効果が落ちるから。他にも影響はありますが、簡単にいえばそういうことです。
また企業がスポンサー契約を結んでいる選手は人気のある選手のため、テレビ放映の視聴率にも関わります。
広告費に投じたお金を最大化するには、是非とも契約している選手に試合に出てもらわないと困るわけです。
マスコミの思惑:視聴率とスポンサー次第
興行重視で人気選手を常に使ってもらいたいスポンサーですが、そこからお金をもらってテレビ番組を作っているのがメディアです。
基本的にマスコミは大口のスポンサーには逆らえません。
また利害もある程度一致しており、彼らとしても数字(視聴率)のためには人気選手に出てもらう方が良い。
スポンサーと違って試合自体が面白ければコンテンツとしては成功なのですが、スター選手が活躍してくれれば話題作りにも事欠かないですから。
ちなみにサッカー協会も運営費をテレビの放映権から得ているので、利害関係で見ればメディア側です。広告代理店もそうですね。
サッカー協会に関しては、本質的には日本サッカーの発展が組織の存在意義なわけで、他の勢力に比べればハリルの選択を支持するのが筋のようにも思えます。が、水面下でどのようなやり取りがなされているかは不明。
以上の理由で、現在のハリルホジッチ監督の代表選考のスタンスだと圧力がかかるのが自然な流れです。
現代サッカーの代表監督という仕事
ハリル自身も、メンバー選考に外部からの圧力があることを度々匂わせています。
「今後、どれくらい日本代表監督を続けられるかは結果次第。残念に思う方もいるかもしれないが、ここで仕事を続ける」
引用:ハリル監督、続投を宣言。「残念に思う人がいるかもしれないが…」(フットボールチャンネル)
「昨日の井手口のプレー。最終的に彼が素晴らしいプレーを見せた裏で、どういったことが起きているのか、皆さんには分からない。なぜそうなったのか、そういった準備がある。それについて本を一冊書けるくらいだ。だが、私の近くにいる人でもそういった価値を見出せない人もいる」
引用:ハリル監督、「代表はみんなのもの」。W杯の準備は「今日から始まっている」(フットボールチャンネル)
各業界団体の利益を考えれば、メンバーを固定して使ってくれる監督の方が便利ですからね。ザッケローニ監督なんかは、スポンサーやメディアに好かれやすいタイプだったと思います。
現代のサッカーの監督は、形の上ではチームの全権を委ねられていながら、実態は違っているようです。
代表の勝利のために信念を貫くか、各利害団体の意思を調整するかの選択を強いられる立場なのです。
ファンの思惑:贔屓(ひいき)の選手が見たい
最後にサッカー日本代表を支えるのに重要なファンについて。
ファンと一口にいっても、サッカーのルールをまともに知らないような人から元プレイヤーまで色々です。が、マジョリティ(多数派)は、いわゆる「にわか」のライト層でしょう。
少なくとも個々の選手の成績をチェックしていたりフォーメーションについて語っている人は少数派だと思います。
ライト層は今でいえば本田や香川といったプレイヤーなら知っていて、自分の見慣れているメンバーに愛着を感じています。
そんな彼らがスポンサーやメディアの意見に同調しがちなのも仕方のないところです。
まとめ
- 代表監督:現状に満足せず、色々な選手を試す。ワールドカップの勝利のためにできることをやる。
- スポンサー企業:広告効果を上げたい。契約している人気選手を出してほしい。
- マスメディア:良くも悪くも数字のために何か刺激が欲しい。スポンサーの機嫌を損ねたくない。
- ファン:面白い試合が見たい。見るなら勝ってほしい。自分の好きな選手が活躍してくれれば言うことなし。
大体まとめるとこんな感じです。
余談ですが、過去に行われた世界価値観調査で日本人はダントツで反権力的だという結果があります。
判官びいきな国民性も鑑みれば、もうちょっとハリルホジッチ監督の側に立ってあげる人がいても良いんじゃないかな、というのが素直な感想です。
最後まで戦略を試す、選手を発掘し続ける。現状のメンバーに満足しない。監督自身もそういうハングリー精神でワールドカップに臨んでいるという事実に気づいてあげても良いんじゃないかなと。
あなたにとって日本代表のサッカーが毎試合面白いものでなければならないのなら、同意するのは難しいでしょう。
でも最終的なゴールのためには、目先の勝利だけにこだわらず、踏まなければならないステップもあるかもしれませんよ。
結果がどうなるかはわかりませんけど。何だかんだいっても、スポーツは結果ですからねー。